comic of year
シグルイ』(山口貴由

「狂気が描かれている」と「気違いが描かれている」は混同しがちなものである。ちなみに今のところ、私の中での「静の狂気」は『美味しんぼ』で、「動の狂気」は『野望の王国』だ。

「気違いがきちんと描かれている作品」は、意外と少ない。そうした人間が描かれる場合は、概して「気違いを描きたいだけ」「気違いを描くことをファッションの一種として捉えている」「作者がただのガイキチ」のどれかで終わっている。残念なことだが、面白い気違いマンガがあまり増えても世情不安に拍車をかけるだけだから、これはこれでいいのだろう。

 そんな中、今年一番、というより現世で最も気違いがきちんと描かれている作品が『シグルイ』なのである。個人的な評価であるが、この作品と作中に出てくる人物の気違いレベルは、吉良吉影、キャシィ塚本、パイマンに匹敵するレベルである。本当に無茶苦茶なのである。気違い作品愛好家で未読の諸賢に強くお勧めしよう。なお、具体的にどのような気違いがいるかは、インターネット殺人事件さんで克明に描かれているのでそちらをご参照願いたい。





Movie of the year
燃えよドラゴン

 ブルース・リー主演のカンフー映画の金字塔がなんと11年連続の Movie of the year 受賞だ〜ッ!

 平時では数年に一回怒ればいいくらいの私であるが、アフロが殺されるシーンばっかりは11年間怒りっぱなしである。許せん!!!

野望の王国雁屋哲由起賢二)』に「復讐とはなんと心の躍ることなのでしょう……」という至言がある。リーの作品の根底にあるのは復讐心の爆発であり、私怨と義憤が相乗した臨界である。これほど、観る者の血肉を沸き立たせるものがあろうか。わたしが何歳まで生きるか知らないが、50年くらいは連続で受賞しそうな作品だ。

 ちなみに次点は『フルメタル・ジャケット』『ゴースト・ハンターズ』であるため、わたしの映画に関する時間は中学生の頃から止まっているといえよう。







Novels of the year
ガリア戦記』(ユリウス・カエサル

 カエサル強杉







絶望 of the year
ロード・オブ・ザ・リング三部作』

 最高に面白かったんだけど、頭の中にある無茶苦茶面白いことを徹底的に現出させようとすると2億7000万ドルもかかるっていう現実を世界中に知らしめてしまったことで、絶望 of the year 受賞。

 勿論、マンガや小説が表現手段として劣ってるというわけではないですよ。手段としては僕は、ペン一本で何でも現すことが出来て具体的に提示できるマンガのほうが素晴らしいと思ってます。でも”現出”させるとなると映画しか出来なくて、それは死ぬほど金がかかるという……。あ〜あ、誰か10兆円くれないかな〜!?