2005年3月号のシグルイは、組織の崩壊をまざまざと描いた回であった。


単行本派の諸賢のために、詳しいあらましは省くが、もはや虎眼流に、事務的なことをしたり、門弟に普通に剣術を教えたり、常識的に振舞ったりすることが出来そうな一般人はい亡(な)くなってしまった。


残ったのは、ダンマリを決め込む根暗・藤木、仲間が殺されたというのに恬然として縁側で西瓜を満喫する木偶・牛股、そして、もはや説明不要の我らが大神官・虎眼先生といった体たらくであり、全国各地津々浦々から「虎眼流あかんちゃうんか」「もうだめぽ」などの存続を危惧する声が挙がっては、大霊界からのギョロ眼による遠隔霊体拳撃により、発声者は死を賜るのである。


さて、今月号冒頭にて、組織としての虎眼流の衰亡・混乱を示すエピソードがあったので、要約し、紹介しておこうと思う。


「犯人を探さんと血気に流行る虎眼流は、門人総出にて山狩りを行ったものの、二匹の猪を捕まえただけに終わった」


もう全く意味が分からない。こうした、「街を探してもいないから山」という、短絡・理解不能・焦燥そのもの行動を取ってしまうあたり、組織としての虎眼流は混乱の極み・只中にあることを見事に表現している。あまりの不可解さに私は思わず「ページ数が足りなかったのかな」などと不敬な可能性を見出してしまったが、そのようなことを考える天をも恐れぬ私は、虎眼先生に双眼を斬られるべきであろう。


しかし気になるのは、今後の展開である。今や昼行灯の名を欲しいままにしている牛股は漫画歴史上類を見ないアッサリさでもって伊良子に屠られるであろうが、必殺剣を物にした藤木はどうであろうか。ストーリーの展開上、どちらかが死ぬことは無いので安心なのだが、それでも因縁深い両者の対決である。どのように描かれるか大変に興味深い。また、「藤木惨敗・即死」という時空を越えた展開が待っている可能性もゼロではなく、その場合、途端にシグルイは、パラレル・ワールド・コミックへと変貌を遂げ、新たなる無人の荒野を切り開くことになるのだが、一読者としては戦々恐々として、一般常識に照らし合わせた展開を切望したい。


そ・し・て、最大の問題は、そう、伊良子・虎眼先生戦である。虎眼先生は、連載開始以降、着実に作品内外においての武力・勢力を強め、今や範馬勇次郎にも匹敵する「負けないキャラ」として地位を確立している。私が独自に虎眼先生の戦闘力を算出したところ、張飛呂布クラスであることは間違いないところであり、刑道栄あたりなら流れ星を使うまでもなく瞬殺であろう。しかし、虎眼先生が死ななければ御前試合は、一巻で描かれているまでの怨念を醸し出すことは出来ないだろうし、全くもってどうなるのか予測がつかない。さっぱり分からない。なにより、虎眼先生が負けるところを見たい人間は、これは確信を持って言えるのだが、全世界に一人たりともいないだろう。一体どうなるのだろうか……。


今月号のラストにて、ついに、伊良子・全盲バージョンが姿を現した関係上、「虎眼先生は一体全体どうなるのか」という私の疑問に、南條・山口両先生より回答が出される日は近づいているのだろうが、それでもなお、X-DAY まで私の混乱・怯え・人心の乱れは収まるところを知らず、高まっていくのだろう。そして、どういう答えが出たにせよ、心は千々に乱れ、私は牛股の追い腹を切るのだろう。





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なお、単行本4巻は6/20発売とのことです。